エピローグ SHOGEN

 ~今日も、自分のために生きる~

 

 日本では図工の授業は週に「1時間」と決まっていますが、ブンジュ村では「1日」取っている学校があります。

テーマは毎回決まっていて「自分の好きな場所に飾りたい絵」。それを子どもが描きたくなったら描く。「描きたくなる時間」はみんな違うから、その日中に描けばいい、というわけです。

 そして、自分で描いた絵を家のどこに飾るか、必ず決めます。さらに、ちゃんとその通りに家に飾ってあるか、先生が家に見に行きます。 これは、自分が描いた絵が、すきな場所に飾ってあることで、その子どもの自己肯定感が高められるということがわかっているからです。 また、小学6年生までに「壁画」を描く授業もあります。

 このようにタンザニアではアートをとても大切にしているのですが、それを物語るエピソードがあります。

 

 ある時、公共の壁に子どもが絵を描いていました。すると、警察がそこに近寄って行ったので、僕はてっきり子どもを注意するのかと思いきや違ったのです。

 「邪魔しないであげてね。彼女は今、自分を好きになる行為をやっているんだから、みんな黙って見ててね」

と警察官は、周りの人に言ったのです。

 

 家に飾る絵を描くことも、壁画を描くことも「残る絵」を描くということ。

これは、自分に自信を持ち、自分を認めていくという行為で、タンザニアではアートを通して、日常から自己肯定感を高める考え方を持っているのです。

 僕は今、海外で個展のお話しをいただくことがあるほかは、おもに日本で日本人の素晴らしさを伝えるトークショーや壁画を描くワークショップをしています。 プールサイドの壁やJRの待合所、駅のホームなどに描いたり、面白いところでは幼稚園のバスやゴミ収集車にみんなで描いたりしたこともあります。

 ごみ収集車に描いた時は、自分の絵が描いてあるゴミ収集車を探しに行く子どもがいたり、ゴミの日に家族全員で、子どもの絵が描かれた収集車が来るのを待っていたりします。

 壁画を描いた子どもは、後日、自分で描いた絵をながめながら、お弁当を食べたりしています。町営バスに絵を描くイベントには、2歳から90歳のおじいちゃんまで総勢65人が集まりました。

 タンザニアのように、僕も「残る絵」「消えない絵」を通して、一人ひとりが自分のすばらしさに気づける活動を続けていきたいと思っています。  そういうイベントで、僕がみんなに言っていることはひとつだけ。

 

 「自分のために描いてね。お父さんやお母さん、人のために描かないでね」

 

 僕がブンジュ村で教えてもらったことです。  「アートに上手い下手はないよ。自分らしい絵が描けたらOKだよ。みんなの今日の心の色は何色かな?まずは自分の心の色から塗ってみようか」

 そう言って描いてもらいます。自分のために、自分らしい表現をすることが大事なんです。

 

 ~中略でーす~

 

 絵を描くというと、子どものものと思われがちですが、自分を表現することに、大人も子どもも関係ないんです。

僕は当時、ブンジュ村で出会った人たち、出来事、生活のすべてを絵に込めて描いていました。それは物語となって、愛の表現になっています。

 

 1枚の絵にどれだけ愛を込められるか、愛を託して届けられるかーー。

 そこに僕はシフトしていきました。

また同時に、僕自身、日々の生活に丁寧に愛を注げる存在になりたいと思っています。だって、「愛が注がれたものからしか、愛は与えられない」のですから。  そう考えると、生活そのものが、アートなんだと実感しています。

 愛を持って丁寧に過ごす日々は、愛の物語であり、愛のアートになるんです。 これは僕だけではありません、誰にとってもそうなんだと思っています。  丁寧に喜びを感じて生きる。  そのためにすることはひとつ。

 

 自分のために生きること。

 

 「ショーゲン、あなたは、明日も自分のために生きるんだよね。おやすみ」

 ブンジュ村での寝る前の挨拶です。

 あなたも、自分のために生きてくださいね。

 こんな素敵な世界で、空を見上げ、自分のために生きるって最高です。

 

 2023年10月吉日  SHOGEN               以上です・・。

 

 ホッコリだけど、意外に神意を突いているような・・

そんな体験をされた、お二方のエピローグでした。「感性・歓喜・魂」をこの本で味わってはいかがでしょうか。

他人の目だとか、世間体だとかが、チョー小さく思えた王子でした。         温王子でした・・・