歯は噛むためだけにあるのではない

 歯科の研究会に出席するまで、私は歯の働きについて、噛むことくらいしか考えていませんでした。食べ物を嚙み切る、砕く、つぶすだけが歯の働きと思っていたのです。しかし、別の働きも考えなくてはいけないと思うようになりました。人間性を発揮するための機能ともいえるのです。

 まず一つ目は、歯がちゃんとあれば見逃してしまうような役割で、言葉を発するための機能です。例えば、入れ歯をはずしてしまうと、うまく発音できなくなって、話す力が低下してしまいます。これは「自分の考えを他人に伝える能力の消失」と言いかえることができるでしょう。言葉を使いこなせれば、物事を抽象的に表現することができます。具体的な事象なら、巧拙は別にして、絵で表現できますが、抽象的な事柄を絵で表現することは困難です。

人間が理解し合えるのは言葉の力です。歯を失うことは、他人に自分の意志を伝える能力を失うことなのです。

 二つ目は、強い意思を現わすときの歯の役割です。歯をくいしばる、歯がゆい、歯ぎしりする、歯を剝くなどの表現は、歯と歯を嚙み合わせて初めて完成する人間の行動や感情です。歯や入れ歯を失ったとき、人間はがんばる、耐える、くやしがる、相手を威嚇するなどの能力も同時に失ってしまうのではないでしょうか。

 このようにしてみると、歯は、食べるためだけでなく、人間らしい自己表現、自己主張、忍耐力などの能力とも繋がっていることがよく分かります。歯科領域の感性の高い先生方によれば、「全人的医療は歯科の理解もあって初めて成し遂げられる」と言います。人間の尊厳と、歯や口の機能は繋がっているということでしょう。

 歯科医の丸橋賢(高崎市)、藤井佳朗(神戸市)、臼田篤伸(川口市)などの先生方が、歯科領域からすばらしい情報を発信しつづけています。   以上です・・。

 

人間の能力にまで話が進みましたが、ごもっともな歯科医先生方の情報でした。頭の隅に置いておくべき情報ですね。

温王子でした・・・