マクロファージは、からだを再利用している

温王子です。今日は免疫細胞のエコ活動です(笑)。では・・。 

 腸の粘膜の細胞はいつも再生しています。陰窩と呼ばれる小さな穴で分裂新生した腸管上皮細胞は、腸絨毛を先端の方へ上昇し、ついには粘膜から剥がれて腸の内腔へ放出されます。実際、便の中には破壊された腸管上皮細胞が存在しています。

 ところで、モルモットの腸を電子顕微鏡で観察して、興味深い現象を発見した人がいます。現在、北海道大学医学部教授(解剖学講座組織細胞学分野)の岩永敏彦氏です。岩永氏は、新潟大学名誉教授の藤田恒夫先生(岩波書店刊「腸は考える」の著者でもある)のお弟子さんですが、岩永氏がモルモットの腸絨毛を観察したところ、腸上皮はあまり腸管内腔に脱落してゆかず、粘膜下に存在するマクロファージがせっせと死にかけた腸上皮を貪食している像が写っていたそうです。つまり、マクロファージは自食作用を発揮して、体の一部を再利用していたのです。

 すべての腸管細胞が内腔に捨てられてしまっては、エネルギーが無駄になってしまいます。単細胞生物時代のアメーバの生き残りであるマクロファージは、自分の体の一部を再利用して、エネルギーの無駄を防いでいたのです。マクロファージが死滅腸管細胞を再利用する比率は、動物によって異なるということですが、人間の場合はこの再利用率が極めて低いそうです。

 断食の話でも触れましたが、動物であれ人間であれ食料が乏しい場合は、このマクロファージの自食作用を亢進させて乗り切ろうとするのでしょう。私たちは、食事の量を減らしても、体重が減少しないという現実に時々出くわします。 食事の量を減らすと、ある程度までは痩せていきますが、その後体重は一定のところで止まることが多いと思います。これは、マクロファージが腸管や肝臓や皮膚などの再生臓器で自食作用を亢進させ、エネルギーの無駄を徹底的に省くという現実が全身で起こるためなのだろうと思います。

 また、動物は、腸管細菌叢の働きで落ちこぼれた死滅細胞を栄養源として再利用し、その増殖した細菌を消化することによって、さらに利用効率を上げることができるのでしょう。

 このような状態の極限が、「霞を食べて生きる仙人」なのかもしれません。こんな言葉が残っているのは、そういう人が過去に実在したからだと思うのです。   以上です・・。

 

 今日は究極のエコ&緊急時システムが、みんなの体に具わっているというお話しでした。王子も無理のない食事の減量で、体験したことがあるので、腑に落ちました。経験は宝なり(笑)。  温王子でした・・・