胃~消化の第一段階は、強酸性の胃液~

 「胃炎・胃潰瘍」~交感神経緊張・血流障害~

 

 胃潰瘍・胃炎は、主に胃粘膜の防御機能が弱まることで起こります。精神的なストレスや身体的なストレスが長く続くことによって交感神経が緊張して血管が収縮し、抹消に行く血流が低下し、血流障害が起こり、過剰に増えた顆粒球が放出した活性酸素と一緒になって起こる粘膜障害です。

 病理標本からは胃炎の粘膜や胃潰瘍の周囲には多数の顆粒球が浸潤していることがわかっています。潰瘍ができたために、そこに顆粒球が集まったと考える説もありますが、そうではありません。

 粘膜の無傷の部位に過剰に顆粒球が集まり過ぎて、血流障害が先行し、その後、組織破壊が起こったと考えるべきでしょう。

 最近、ヘリコバクター・ピロリ菌という胃粘膜に生息する常在菌が関連していることが指摘されています。ヘリコバクター・ピロリ菌の、胃酸を中和するために胃の中の尿素からつくるアンモニア、放出する毒素などが胃粘膜を傷つけ、その部位が胃酸の刺激を受け続けて深い傷になり、胃潰瘍が引き起こされると考えられています。

 ピロリ菌は、日本人のほとんどが持つ常在菌です。しかし、ピロリ菌に感染している人が必ず胃炎・胃潰瘍になるわけではなく、ピロリ菌を持たない人でも胃炎・胃潰瘍になる人がいます。例外が多く、ピロリ菌を原因とするのは問題です。

 心配事を抱えたりして交感神経が緊張し、顆粒球がふえて粘膜に押しかけ、活性酸素を放出して常在菌と反応して、胃潰瘍や、びらん性の胃炎が起きるのです。ストレスによって増加した顆粒球を活性化するのは常在菌です。二次的にヘリコバクター・ピロリ菌の存在もかかわってきますが、決して主因ではありません。

 ストレスが過剰の時は、たとえ常在菌がなくても顆粒球単独の働きで粘膜は十分に破壊されます。ましてや常在菌がいてもストレスがかかると副交感神経の働きが抑えられ、胃酸の分泌能力が低下して強酸性を維持できなくなります。H2ブロッカーなどの制酸剤を使うと、より胃酸が抑えられて強酸性が保てなくなるので、胃粘膜はピロリ菌にとって棲み心地のいい環境となり増殖していきます。

 常在菌が悪いと考えてヘリコバクター・ピロリ菌の発見にノーベル賞が授与されるのは根本的に間違っています。

 常在菌を抗生物質で叩いて除菌するのは間違いです。常在菌があるからこそ体の異常がわかるのです。常在菌に罪をなすりつけて無くしてしまおうとするのはおかしな発想です。心配事の解決やストレスに負けない精神力が何よりも必要です。

 また、解熱、鎮痛、炎症抑制などを目的に使われている非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を飲んでいる人は、胃潰瘍になることがあります。

 この薬は、体の中で炎症を引き起こす化学伝達物質(プロスタグランジン)を合成するシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害する働きがあります。体は破壊された組織を修復させるためにプロスタグランジンをつくろうとするのですが、NSAIDsによって抑制すると交感神経の緊張を引き起こしてしまいます。薬の使用は炎症の強いときだけ3日間程度にしましょう。

 

 「胃食道逆流症」~交感神経緊張・血流障害~

 

 逆流性食道炎など、胃酸や胃の内容物が胃から食道に逆流する食道の炎症性疾患は、食道と胃の境にある下部食道括約帯(LES)の働きの低下や食道裂孔ヘルニア、胃液の分泌量が多いことが原因とされています。

 そのため、胃液の分泌を抑制する胃酸分泌抑制剤、胃酸を中和させる制酸剤、食道の運動や胃の運動をよくする消化管運動機能改善剤、粘膜を保護する粘膜保護剤などの薬剤が、症状をやわらげるために対症療法として使われます。

 自覚症状は、強い酸性の胃液と混ざり合った食物や胃液などが食道や喉、口の中に逆流する感じ(吐出)や口がすっぱくなる感じ(呑酸感)、しわがれ声、みぞおちや喉が焼けるように痛い胸痛、喘息のような咳、胸やけ、つかえ感などがあります。

 口から入った食物を胃の噴門部から幽門部へ送るのは蠕動運動です。胃の蠕動運動は、うねるように収縮してかきまぜる攪拌運動で、規則正しく1分間に約3回程度、絶えず行っています。食物によって胃がふくらむと、その運動は活発になります。この運動によって食物が胃の出口付近の幽門洞へ達すると、その部分の筋肉が収縮して食物はさらに消化するため胃の中央に戻されます。こうして食物は2~3時間胃の中にとどまり、しだいに粥状になって十二指腸へ送られます。

 消化を司っているのは副交感神経です。蠕動運動も胃液の分泌も副交感神経優位によって盛んになり、交感神経によって抑制されます。

 幽門部、食道へ逆流するということは、蠕動運動がうまく行われていないということです。これは、交感神経緊張による血流障害が原因です。ストレスなどでの過度の交感神経緊張状態によって、血流が低下して、平滑筋という筋肉が連続して収縮する蠕動運動が活発に行われていないのです。そのため、胃液と食べ物がうまく混じりあわずに、逆流しています。

 本来なら消化が進んで十二指腸へ送られるはずの内容物も、次の消化のの過程に進められないほどのかなりの交感神経緊張状態です。

 患者さんの中には、手術を行った人もいますが、胃をとっても逆流性食道炎が治らなかった人がいます。

 肥満や、お腹を締め付けたり、重い物を持つことにより、血管を収縮させて胃が圧迫され、胃液が逆流しやすくなります。副交感神経優位の人でも血流が悪くなるとあらわれる症状です。  以上です・・。

 

いや~今回はだいぶ長くなってしまいました~(笑)。

王子も気を付けないといけない人のひとりなので、ついつい、端折ることなく書いてしまいました。最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

次回は「十二指腸」を予定しています。  温王子でした・・・